雛納め
2021/ 03/ 07ねんごろに雛を包みてしまふ闇 taizo
雛人形を仕舞い忘れると婚期が遅れるということを聞きます。
一節では、このジンクスには「片付けを後まわしにするような
女の子は、素敵な大人の女性になれません」という教育的な
意味が込められているのだそうで、また雛飾りは天皇陛下の
結婚式を表現しており、女の子の厄を引き受けてくれる人形
ともされているそうです。そんな人形を出したまま、仕舞い
遅れては、バチが当たるという意味もあるとのことでした。
揚句、ねんごろに包みて闇に雛しまふ でしたが、「うーん、
とても面白い句なのですが、語順がやや散文的、こう推敲
すると闇が際立ちますね」と、このように添削されました。
紙雛の残されてゐる雛納め 岩本多賀史
夕雲のふちのきんいろ雛納め 鍵和田秞子
又来年と八十歳の雛納め 宗智尾

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良き昭和
2021/ 03/ 06犬ふぐり昭和は古き良き時代 taizo
昭和に育った人は、理由はさまざまですが、大半の人は
昭和は良かったと言います。昭和から平成、いろいろな
ことが様変わりした時代でしたが、その変わりように大きく
影響したものに ITがあり、それは生活様式、思考回路、
ものの価値観や、また人の行動様式まで変えていきました。
今やそのIT環境は、若い人の精神形成まで影響しているように
思えてなりません。それは必然なので善し悪しではありませんが、
昭和は良かったという人たちには、この変わりようで失った
多くの大切なものが、漠然と見えているのかも知れません。
令和になりそしてまた次の世になったとき、平成・令和に育った
人たちは、「自分の世代はいい時代だった」と言うのでしょうか。
飯つぶの糊のねばりや昭和の日 taizo
昭和など忘れて久し春時雨 高野ムツオ
菜の花や昭和の色に暮れている 仁田脇一石
ステテコや彼にも昭和立志伝 小沢昭一

地虫出る
2021/ 03/ 05啓蟄の小さき影の動きけり taizo
啓蟄は二十四節気の一つで、2021年は3月5日がその日に
あたります。啓は「ひらく」、蟄は「土の中で冬ごもりして
いる虫」の意で、冬眠していた蛇や蛙などが暖かさに誘われ、
穴から出てくる頃のことを言っています。
普段は漢字も難しいですし、言葉に出すこともありませんが、
なぜか俳句をやると、この頃の季語として1番早く覚えて使って
みたくなる季語です。地虫出づ、蟻穴を出づなどは傍題です。
地虫出て不要不急と言はれても taizo
啓蟄に自分の居場所さがしてる 須﨑美穂子
地虫出て金輪際をわすれけり 阿波野青畝

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母の手
2021/ 03/ 04草餅に母の荒れたる手の記憶 taizo
「母もの」の句は採らないという方たちがおられますが、
私には多くの母の句があります。
母ものの句に問題があるとするなら、子のために耐えてとか、
小さくなってゆく母等々、類型的な表現が多くなり、俗っぽい
受け狙い的な、情緒が過ぎる句になるからだと思います。
しかし、特に亡くなった母の句は強く感情が表に出て、より
情緒的にもなってしまいます。それはしかたがないこと。
その感情そのものが詠みたいことなのです。
類型的にならないように、表現を工夫しながらこれからも
多くの母の句を、詠んで行こうと思います。
児に還る薄きその手に桜餅 taizo
まどろめば母きて坐る春の昼 taizo
母笑ふアルバムに咲く桜かな taizo
桃の日
2021/ 03/ 03桃の日の使ひ古せし三面鏡 taizo
春寒の官女は軽く口を開け taizo
お雛さまは、はじめは紙製だったが、室町時代になって
すわり雛の原型ができたらしい。元禄時代に木や土で精巧な顔や
手を作り、その上に胡粉を塗って、美しい衣装を着せた雛人形が
現れました。男児の端午と並んで雛祭が盛んになったのは
この頃で、江戸時代には幕府や大奥でも雛祭りを行うように
なり、やがて武士階級から町人へと広まっていったそうです。
雛飾りの五段から七段などという豪華なものが出て来たのは
幕末から明治になってのことのようです。
わが家の雛飾り、阪神淡路大震災でバラバラに壊れましたが
修復されて、物入れの奥に静かに眠っています。
人ごゑにいろのありけり桃節句 那須ゆう子
田に水のみちをつけをり桃節句 森田公司

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ほうれん草
2021/ 03/ 02長男はやればできる子はうれん草 taizo
季語は、食卓にのぼる野菜として広く親しまれている菠薐草
(ほうれんそう)です。「菠薐草といえばポパイがすぐに出て
きてしまう。そこを乗り越えて新しい発想にという考え方も
勿論あるが、誰もが思いつく発想とは、言い換えれば盤石の
共通理解でもある。それを味方につけて展開していく作句の
考え方もあります。」と、かの夏井いつき先生の弁でした。
先月、娘の家の長男は、難関中学校入試に見事合格しました。
また、次女の家の長男は、なかなか先生の言うことを聞かず、
我が道を行くタイプの幼稚園生みたいです。
どれもこれも個性です。頑張れ、ガンバレ・・
はみ出して育つのもよし菠薐草 辻桂子
今日もファイト菠薐草の根が紅い 森美穂
茹で過ぎの菠薐草のやうな日も 菱田瞳子

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三月
2021/ 03/ 01三月や書机の向き変へてみる taizo
ある俳人の俳句を作る動機という記述がありました。
「俳句を作り続けることができるのは季語があるから。
季節は毎日じわじわと、またある時は一足飛びに変化して
ゆくが、それを表現する季語が必ずある。季語は、
先人たちが積み重ねてきた言葉で、それを共有するのだと
思うと心強く、大きな流れの中にいる安らぎを感じる。
その季語があることが、俳句を作る動機と言えるかも・・」
季語は、身の周りでも記憶の中にも見つけることができ、
メッセージ性も思想も、特別に込めることもない。
私は、17文字に季節を入れた詩を書く、このたった17文字
しかないところに、懸命になれているように思う。
人によく伝えようと思えば、長々とした自由詩や文もあるが
17文字で伝え想像してもらう、おもしろい文芸だと思う。
もう三月、この季語にもたくさんの思いがこもっています。
三月の雲の自在をまのあたり 藤勢津子
三月やグローブがいい音をして 今坂柳二
三月の声のかかりし明るさよ 富安風生

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花の種
2021/ 02/ 28小袋の母のかなもじ花の種 taizo
季語は花の種、種物の傍題。昔から農家では、栽培する
穀物、蔬菜、草花などの種を自家採種して乾燥させて
次のシーズンの準備をしていました。
それらの種を総称して種物というそうですが、家庭では
うちの母も季節の花の種などを乾燥させ、小袋に保管を
して次の季節に咲かせることを、楽しみにしていました。
抽斗に夕顔の種こぼれゐる 加倉井秋を
花種を振つて明るき空のあり 澤村昭代
種袋軽き音して命持つ 久須美晟子

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いわしの句
2021/ 02/ 27到来の地酒に合せ目刺焼く taizo
目刺は、真鰯などを竹串や藁などに通して干したものをいうが
そのイワシも、季語になると「鰯が秋」で、「うるめが冬」、
「目刺になると春」となり、ややこしくなります。
鰯は、日本近海で1年中獲れるものだが、このように鮮魚と
干物で、3つの季節に分けるのは、それぞれ最も季語として
真価を発揮する時期を考えたためであろうと思います。
帰り来て私の時間うるめ焼く taizo
ひとりゐて鰯のわたの苦きこと taizo
骨格の父似と言はれ目刺焼く taizo

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わらび餅
2021/ 02/ 26うかつにも爺と呼ばせてわらび餅 taizo
日本人の平均寿命は、女性が87.45才、男性が81.41才と
公表されています。「健康寿命」というのも発表されており、
それによると男性72.14才、女性は74.79歳だそうです。
健康寿命は2001年に男性69.40才、女性72.65才だったので、
長く健康に過している人が増えてきていることが分かります。
健康意識の高まりや、高齢者の社会参加の広がりが背景に
あるということですが、平均寿命と健康寿命の差は、男女とも
9年から12年以上もあります。多くの老人が目指すところの
「ピンピンころり」には、まだまだとどいていないようです。
ちなみに、健康寿命とは、介護を受けたり寝たきりに
なったりせずに日常生活を送れる期間を示しているそうです。
手招かれ畳の上のわらび餅 関戸美智子
老たのし飽食の世にわらび餅 水原春郎

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キリンの句
2021/ 02/ 25春めくやキリンに風のあるらしく taizo
春めくという季語は、春浅しより少し遅めの、
春が目に見えてかたちを表し始めた頃をいいます。
春浅しより春の到来を喜ぶ気持が強く、春にやや重心を
移した感じがあります。いずれにしても、ともかく
キリンにも人にも、すでに冬は去りました。
春浅き麒麟の空の飛行雲 三好達治
春の雲キリンの首がさびしがる 相吉香湖
石鹸玉麒麟の高さを越して爆ぜ 蓼汀

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耕
2021/ 02/ 24春耕の天地を返しトラクター taizo
いつまでも寒い寒いと言ってはおれない 。春の一番の
農作業として、田や畑を耕さねばなりません。
俳句では耕・春耕といい、種を蒔いたり苗を植えたりする
前に、田畑を鋤き返すことを詠みます。北国では雪解けを
待ってする作業のため、さらに春の感がひとしおでです。
耕せり三本鍬の柄の窪み taizo
春耕の力加減を土に聞く 近藤栄治
寸馬となり豆人となり耕せる 鷹羽狩行
くろぐろと田毎の土を耕せる 京極杞陽

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水温む
2021/ 02/ 23水温む砥石に残る母の癖 taizo
水温むは喜びと希望にあふれた季節を、水が温かく感じられる
ようになったという繊細な感覚で言い表した季語です。
対照的な季語に秋の水澄むがありますが、こちらは気温・
水温の低下とともに、川の底まで見通せるほど澄んで来る
清冽な感じを表わしていて、やや冷たい感じがしてきます。
水温むはあくまでも優しく、のびやかな感じがして魚など
生き物の動き出す様子まで見えて来るようです。
わが顔を映して水の温みけり 青柳志解樹
温むより何やら萌ゆる水の底 正岡子規
これよりは恋や事業や水温む 高浜虚子

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初春の句
2021/ 02/ 22寒明の歩くことだけかんがへる taizo
北国ではまだ春という感じではないのであろうが、私の
地方では、いろいろな所で気分も含めて春めいて来ました。
もっとこれから3月、4月になれば、歳時記を眺めるだけで、
俳句を作る意欲の湧いてくる季語が並んでいます。
おなじみのものだけでも、さくら、桃の花、菜の花、
スミレ、レンゲ、蒲公英、土筆・・、 野草、山菜や、
芽吹きなども含めれば、たくさんの季語があります。
机上で一句をひねるだけではなく、外に出て野原を歩き、
思いを込めた俳句が、多く詠めればいいと思います。
この国の言の葉やさし母子草 taizo
あめつちの睦みし重さ春キャベツ 河野輝暉
うれしさは春のひかりを手に掬ひ 野見山朱鳥

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春寒し
2021/ 02/ 21春寒やイエスの白き向う脛 taizo
揚句は先日の俳句会に出したもので、この句の元は、春寒の
イエスに白き向う脛 だったものを先生に添削されました。
少し散文過ぎるので「や」の切れを入れること。
イエスにとしてしまうと説明的なものになってしまうので、
ここは、イエスのにすること、というものでした。
散文とは、韻律や定型にとらわれない通常の文章のことを
いいますが、俳句は韻文でそれは辞書によると、聴覚に一定の
定まった形象を感覚させる一定の規則、韻律に、のっとって
書き表された文章。散文の反意語とあり、 一定のリズムを
持ち、暗誦されるのに適しているとあります。
なごりありこの教室に春寒に 稲畑汀子
何一つ不足なけれど春寒し 船木紅花
子の家は所詮子の家春寒し 河原紀久子
春寒のうどんに黙らせる力 秋尾敏

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